工務店・リフォーム会社必見!建築DXとは?ポイントや成功事例を解説

建築業界は、職人の高齢化や減少が深刻な問題になっています。たとえば、2000年に約65万人いた大工は、2030年には21万人まで減ると予想されています。

大工だけではありません。生産人口が減る日本では、設計士も現場監督も、いずれ人材不足に陥るでしょう。しかし、そんな建築業界だからこそ、DXに取り組めば大きな恩恵を受けられます。

本稿では、工務店やリフォーム会社の経営者さまに知っていただきたい「DXの基礎知識」をご紹介します。御社も、アナログな業務や非効率なやり方、代わり映えしない顧客体験を革新してみませんか。

建設・建築業界で話題の「DX」とは

まずはDXの概要からご説明します。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の概要

さっそくDXと、似たような意味を持つ「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」について解説します。さらに、DXによって起こる「デジタル・ディスラプション」についてもご説明します。

「デジタル・トランスフォーメーション」とは

DXは「デジタル・トランスフォーメーション」の略です。

昨今、クラウドやビッグデータなどのデジタルプラットフォームの普及により、市場や顧客体験が劇的に変化しました。これに順応する形で製品やサービス、業務手順を再構築する動きが加速しています。

ひいては、ビジネスモデル自体をデジタルありきで革新する業態も現われました。たとえば、AmazonNetflixを想像していただくと分かりやすいでしょう。

このように、ビジネスモデルをデジタル化することで競争上の優位性を確立する動きを「DX」と読んでいます。日本では、すでに6割強の企業が何らかの形でDXに関する取り組みを進めています。

参考:情報通信白書刊行から50年~ICTとデジタル経済の変遷~

「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」との違い

DXの定義を理解しやすくするために、似たような意味を持つ「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」もご紹介します。

この3つは、どう違うのでしょうか。それぞれの取り組み例をあげてみましょう。

「デジタイゼーション」は、業務を部分的にデジタル化することを指します。一方、「デジタライゼーション」は社外も含めて業務のプロセス全体をデジタル化することを指します。

DXは、先述のとおり、ビジネスモデル自体がデジタルをベースに立脚しています。ですから、かなり革新的な取り組みと言えます。

「デジタル・ディスラプション」とは

業務や商品、サービスのデジタル化は、破壊的な変化をともなうことがあります。このデジタルによる破壊のことを「デジタル・ディスラプション」と言います。

デジタル技術は、相当なスピードで活用のハードルが下がっています。その結果、デジタル技術を実装した新興企業が数々誕生し、既存企業を脅かしています。

たとえば、先述のAmazonNetflixを想像してみてください。両社の進出で、退出を迫られた会社が数多くあると思いませんか。

また、デジタルを活用したサービスは、距離の制約を軽々と超えます。3Dプリンタ住宅が実現すれば、他府県だけでなく海外から競争相手がやってくる可能性もあるでしょう。

DX企業の登場で淘汰(とうた)されないように、今からできるデジタル化を進めておきたいところです。

DXのメリットとデメリット

つづいて、メリットとデメリットの観点からDXを見てみましょう。

デメリット

まずは、デメリットからご紹介します。

DXを推し進めるにはリソース(人材・資金・時間)が必要です。現在、DXを進められそうな人材がいない場合は、新たな雇用や外注が必要になるでしょう。

また、定着しているアナログな手法を破壊することに抵抗する人も出てきます。とりわけ高齢の職人に協力してもらう場合は、丁寧な話し合いや手ほどきが必要になるでしょう。

説得にあたる際は、目的と「利用すると仕事がラクになる」というポジティブなイメージを伝えることが大切です。「手戻りが減る」や「電話連絡を削減できる」など、具体的な便益を理解してもらう必要があるでしょう。

メリット

DXの主なメリットは、以下のとおりです。

DXまで行かなくとも、一部の業務をデジタル化するだけで、効率化やコスト削減を実現できます。業務時間の浪費が止まれば、集客や顧客満足の向上など、本来注力すべき仕事に時間を分配できるでしょう。

サービスも、今より便利で正確でスムーズに提供できるようになります。たとえば「VR見学会」や「オンラインセミナーのアーカイブ」を整備すれば、スタッフを誰一人動かすことなくお客さまとの接触頻度を増やせます。

DXで改善できそうな、工務店やリフォーム会社の課題

さて、もう少しメリットを深掘りしてみましょう。DXは工務店やリフォーム会社のどんな課題を解決してくれそうでしょうか。

建築業界は、紙の利用が多い業界です。紙の契約書や顧客管理台帳だけでなく、まだFAXを使っている会社も少なくないでしょう。電話も、1日に何十回とかけたり受けたりしていませんか?

これをすべてアプリで代替できれば、以下の問題を大幅に解消できるでしょう。

顧客や従業員のニーズの変化にも対応できます。

デジタルサービスに慣れた若い世代は、アナログサービスを「面倒で融通の利かないもの」と感じています。24時間いつでも疑問に答えて欲しいし、セミナーはネットで倍速視聴したいのです。そんな不満にも応じられるでしょう。

働き方の多様化への対応に迫られている企業も、チャンスです。業務のほとんどが出社を前提としている建築業界は、テレワークを導入するためにビジネスモデルの見直しも迫られるでしょう。DXの出番です。

工務店やリフォーム会社のDX成功事例

つづいて、DXの推進、あるいはデジタイゼーションやデジタライゼーションの事例をご紹介しましょう。

FAQや自動応答でお問い合わせの対応コスト削減

FAQ は「Frequently Asked Questions」の略で、いわゆる「よくある質問」をまとめたものを指します。シンプルですぐにできる合理化施策ですが、その割に成果が大きいのでおすすめです。

サービスを提供していると、同じような質問を度々尋ねられ、その度に同じ答えを繰り返すことがないでしょうか。FAQがあれば、問い合わせに対する時間と手間を省くことができます。

たとえば、ホームページ等にQ&A集を整備した会社は、電話やメールで尋ねられる回数が減っています。Q&Aで簡潔に説明できないような事項を、ブログ等で丁寧に解説してもいいでしょう。アクセス数の増加に寄与してくれます。

電子契約で印紙・書類管理の負担を軽減

電子契約を導入して、コスト削減と顧客体験の向上を実現させた会社が増えています。

工事請負契約は「10005000万円」のものは「本則税率2万円 (軽減税率1万円)」の印紙が必要です。契約を電子化すると印紙が不要になり、御社もお客さまもコストを削減できます。

お施主さまの署名の手間を最小限にすることも可能です。紙の場合は、さまざまな契約書や同意書に何度も署名しなければなりません。電子契約なら、1回だけ署名すればすべての書類に反映されます。

保管も簡単になり、いつでも参照しやすくなります。お施主さまはサッと契約書を見返したりプリントアウトしたりできますので、たとえば、以下のケースで重宝します。

ただし、紙の契約書か電子契約か、お客さまに選択していただけるようにする必要があります。現時点では、電子契約を受け付けてくれない金融機関があります。電子契約に抵抗感があるお客さまもおられるでしょう。

現場管理をICTで合理化

ICTは「Information and Communication Technology」の略で、コミュニケーションに特化したIT技術を指します。建築業界を対象にしたものも数多く開発されていて、導入する会社が増えています。

建築現場にICTを導入すると、さまざまな業務を効率化できます。例をあげてみましょう。

たとえば、新入社員やお施主さまは、電話で現場の様子を話されてもなかなか状況をイメージできません。一方、ICTを活用したチャットで写真付きの報告を受ければ、状況を理解しやすくなります。

また、チャットなら手の空いているときに確認して返信できます。電話のように、つながるまでかけ直す必要がありません。現場に行く頻度も減らせますので、現場監督の負担も軽減されるでしょう。

工務店やリフォーム会社は、DXをどのように進めていくべきか

DXを推進する場合、やるべきことがたくさんあります。いくつか、例をあげてみましょう。

このように書き出すと、大変な道のりのように感じます。しかし、大切なのは最初の一歩を踏み出すことです。まずは、目の前の課題や顕在化している顧客ニーズからデジタル化で改善していくとよいでしょう。

デジタル化サービスも増え、導入コストが下がっています。もう、自社で開発しなくても、以下のようなさまざまなツールを利用できます。

まずは、このようなサービスの資料を取り寄せ、運営会社の説明を聞いてみるところから初めてもよいでしょう。

【まとめ】工務店やリフォーム会社が取り組むべき建築DXとは

DXとは、ビジネスモデルのデジタル化を指します。業務の部分的デジタル化(デジタイゼーション)やプロセス全体のデジタル化(デジタライゼーション)とあわせて脚光を浴びています。

従事者の高齢化問題や多くのアナログ業務を抱える建築業界では、一足飛ばしにDXするのは難しいかもしれません。まずは、顧客や従業員の要望に耳を傾け、それをデジタルで解決できないか検討してみるといいでしょう。

いずれ、人材不足が深刻化します。残念ながら、人材獲得とデジタル化の荒波の中で退場を迫られる会社も出てくるでしょう。そのときに生き残れる会社になるには、今からデジタルで顧客体験向上と業務の効率化を図らねばなりません。

御社も、手を着けやすいところから、最初の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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