SDGs、中小の建築会社やリフォーム会社はなにから取り組むべきか
本稿では、SDGsの概要や建築業界の取組について解説します。SDGsに関心があるが始め方がわからない中小の建築会社様やリフォーム会社様の参考になれば幸いです。
大手ハウスメーカーを中心に、SDGsに取り組む建築会社が増えてきました。まだまだ中小企業では実施しているところが少ないので「我が社も様子見」とお考えの企業様が多いことでしょう。
しかし、SDGsは他社に先駆けて取り組むべき課題です。御社が「社会や環境のことも考慮して経営したい」とお考えなら、他社がどうしているかは関係ありません。
御社が先陣を切って、社会や地球環境に関心を持つ企業であると、世間に発信してみてはいかがでしょうか。
SDGs(持続可能な開発目標)とは?
まずは、SDGsの概要からお伝えします。そもそもSDGsとは、どのようなものでしょうか。「よくわからない」と感じておられる方は、こちらからご覧ください。
SDGsとは?
SDGs(エス・ディー・ジーズ)は「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標のことです。国連加盟193か国が、2030年までに達成するべく掲げました。
SDGsは環境政策と思われがちですが、その範疇を超えて、個人の健康や文化的な生活、尊厳、社会の持続可能性を確保しようとしています。「誰一人取り残さない」と宣言していることでも有名です。
SDGsは17の目標と、それらを達成するための169のターゲットで構成されています。目標は相互に関連していて、ひとつの目標の達成が他の目標の達成にもつながるケースがあります。
さて、世界はどの程度「SDGs」を重く受け止めているのでしょう。その様子は「国連ハイレベル政策フォーラム(HLPF)」を見ればわかります。
HLPFでは各国の達成度をモニタリングしていて、2021年の上位は「フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ベルギー」など欧州諸国が占めています。日本は18位で、欧州以外の国々の中では健闘しているほうです。
SDGs採択の背景
SDGsの前身は、2001年に策定された「ミレニアム開発目標 (MDGs)」です。この取組は世界が貧困に立ち向かうためのもので、飢餓対策や致命的な病気の予防、すべての子どもへの初等教育普及などが目標に組み込まれました。
MDGsでは国連加盟国が「2015年までに目標を達成する」ことに合意して、数々の成果を残しました。しかし未達成のものもあり、まだ終止符を打てていません。そこで、未達成の目標や新たな課題が、2015年の国連サミットで採択されたSDGsに継承されたのです。
私たちは、将来を担う子どもたちに「持続可能な世界」を渡さねばなりません。そのために利己を超えて、MDGsで着手した課題を終わらせる責任があります。
建築業界とSDGs
世界はSDGsの目標達成に向けて動いています。各業界の大手企業も、いち早く行動を開始しました。では、建築業界の中小企業はなにをすればいいのでしょうか。引き続き、見ていきましょう。
建設業界の動き
日本建築学会が2020年4月に「SDGs対応推進特別調査委員会」を設置したのをご存知でしょうか。じつは、建築業界は事業そのものがSDGsと密接に関わる業界で、17ある目標の多くに影響力を持っています。
ですから、建築業界はSDGsの達成を牽引できる業界として期待されています。SDGsには法的な拘束力も罰則もありませんが、建築業界では「SDGsは、優先度高く取り組むべき課題」として認識されていくでしょう。
今後は、多くの企業がSDGsを意識した活動や発信をおこなうことが予想されます。まだ取り組めていない企業は後れ(おくれ)を取らないよう、むしろ先陣を切れるよう心がけるほうがよいでしょう。
SDG Compass(SDGコンパス)とは?
SDGsはグローバルな取組であり、その大き過ぎるスケールから、企業のなすべきことが見えにくくなっています。そこで、企業がSDGsにどのように取り組むべきかを示すため「SDG Compass (SDGコンパス)」という行動指針が作られました。
この指針は5ステップあります。ご紹介しておきましょう。
- SDGsを理解する(推進メンバーづくり、社内勉強会など)
- 優先課題を決定する(調査、自社が貢献できるSDGsの見極めなど)
- 目標を設定する(ロードマップ作成、優先課題を踏まえたKPI設定など)
- 経営へ統合する(各事業部への落とし込み、経営理念・ビジョンの再策定など)
- 報告とコミュニケーションをおこなう(報告書作成、取組の外部発信など)
企業は、この「SDG Compass」を頼りに取組を進めていくとよいでしょう。
参考:SDG Compass
SDGs、中小企業はどう始めればいいのか
現在、SDGsについては大手ハウスメーカーやゼネコンの取組が目立ちます。中小企業がSDGsに取り組もうとした場合「なにをすべきか、わからない」と、スタートでつまずく企業が多いようです。
中小企業がまずやるべきは「スタートする」ことです。最初からハードな準備をしようとすると、一歩目が踏み出しづらくなります。無理なくできるところから実行していきましょう。例をあげます。
- 日々の営業活動をSDGsに結びつけてみる
- 朝礼等で「本日おこなうSDGsに結びつく行動」を宣言してみる
- 社員用のコーヒーをフェアトレード製品に変えてみる
- 備品を買いに行くときは、マイバッグを持参する
- 名刺を地球にやさしい素材に変えてみる
どうでしょうか。今すぐできそうなものは、ないでしょうか。
このレベルの行動ができたら、つづけて、中長期の取組として経営目標に落とし込むところまでやるとよいでしょう。指針やKPI、施策にまで落とし込んでいく段階です。
▼取組の指針
- 17のゴールのどれと関連する取組か検討
- 169のターゲットのどれと関連する取組か検討
▼取組のKPI
- 具体的で測定と達成が可能な評価指標の設定
- 目標達成期限の設定
▼具体的な施策
- 具体的にはどんな行動を取るのか
- 現状はどうなのか
SDGsに対する取組が具体化できたら、ホームページ等で「ビジョン」として積極的に開示していくとよいでしょう。
SDGsに取り組むメリット
中小企業がSDGsに取り組むと、どのようなメリットがあるのでしょうか。取り組まなかったときの悪影響もあわせてご紹介しましょう。
SDGsに取り組むメリット
SDGsは、社会環境に良い影響をもたらすだけではありません。実行する企業にとっても、そしてその企業の顧客にとっても満足をもたらす、いわば「三方良し」の取組なのです。
SDGsに取り組むことによって期待できるメリットを、いくつかご紹介しましょう。
- 温室効果ガス(CO2等)の排出量削減
- 企業イメージ・信用度の向上
- 売上・利益の向上
- イノベーション指向の体質になれる
- 社員満足度の向上が期待できる
建築業界の企業は、ZEH住宅やLCCM住宅を通じて脱炭素に貢献できます。その取り組みを通じて地球環境の健全化に貢献することで、顧客の皆様から愛される企業になれます。
そのような形で会社の信用力が向上すれば、売上を押し上げる効果もあるでしょう。環境負荷を少なくする住宅の開発はコスト削減にもつながり、利益率の改善も期待できます。
新規開発は困難をともないますが、企業がイノベーション指向の体質を手に入れるチャンスです。新しいパートナーとの出会いもあるでしょう。そのような協業も、SDGsは目標(17.パートナーシップで目標を達成しよう)のひとつとしています。
地球環境に貢献して、顧客に認められ、売上が向上し、さらにSDGsを意識した開発が進む。この流れは、ともに働くスタッフのモチベーション向上の源泉にもなるでしょう。
SDGsに取り組まないと、どうなる?
SDGsは、企業の姿勢をはかるバロメーターになりつつあり、ちゃんと取り組めば企業の信用力向上に寄与します。逆にSDGsに反する活動や行動を取ると、利己的ととらえられ営業活動に支障をきたすこともあり得ます。
たとえば、消費大国であるアメリカと中国は、SDGsの達成度において上位20位に入っていません。この事実を知って、あなたはどう感じますか?いっぽう、環境問題に積極的に向かいあうヨーロッパ諸国のことをどう感じますか?
今後は世界的に、SDGsに取り組む企業がさらに増えていくでしょう。SDGsに前向きな企業とSDGsに無関心の企業、顧客はどちらを応援したいと思うか明白ではないでしょうか。
とは言え、SDGsに取り組んでいるように見せかける「SDGsウオシュ」にはならないよう、細心の注意が必要です。世間は不正に敏感で、SDGsウォッシュ企業は無関心な企業より冷遇されかねません。言行不一致をおこさないようにしましょう。
建築業界のSDGsの取組事例
中小の建築会社は、SDGsに対してどのような行動をおこなえばいいのでしょうか。いくつか事例をあげてみましょう。
すべての人に健康と福祉を(目標3)
住まいは健康に大きな影響を与えます。よって、多くの企業がSDGsの目標3に取り組んでいます。たとえばヒートショック等、一部の事故や病気は住宅を高断熱化すると防止につながるとする調査報告があります。
質の高い教育をみんなに(目標4)
現在、建築業界の職人は深刻な人手不足に直面しています。そこで、社員大工制度を導入する企業が出始めました。しっかりシステマチックに技能習得できる場を設けることは、職人の安定だけでなく、SDGsにもかなう行為なのです。
ジェンダー平等を実現しよう(目標5)
建築業界の現場は、男社会です。ここを女性でも活躍できるように、ロボットやICT(情報通信技術)の導入を検討する企業が増えています。育休や時短勤務がしやすい環境を整えるのも、男女問わず働きやすい職場づくりに寄与します。
エネルギーをみんなに、そしてクリーンに(目標7)
建築業界にとって「再エネ」はホットなキーワードです。ZEH住宅やLCCM住宅を開発して磨き、さらに高水準の高気密・高断熱性能を目指すことで、SDGsの目標7に貢献できます。
住み続けられるまちづくりを(目標11)、つくる責任つかう責任(目標12)
日本は、地震大国です。どの建築会社でも取り組んでいる「大地震でも倒壊しない家づくり」は、そのままSDGsの目標11や12に貢献できます。さらに、長寿命住宅の開発やメンテナンスの仕組化、リフォーム事業の推進も目標11や12に役立ちます。
建築業界のSDGsまとめ
建築業界はSDGsに影響力がある業界です。しかし、まだまだ中小企業で積極的に取り組めている会社は少数です。重要なのは、様子見ではなく行動です。できるところから初めてみましょう。
名刺を地球にやさしい素材に変えてみる、SDGsをテーマに朝礼でスピーチしてみるなど、明日からできることがいろいろあるのではないでしょうか。
最初の一歩を踏み出せたら、次は経営目標に落とし込んでいきましょう。決まったこと、行動すること、行動できたことは、積極的にホームページ等で発信していくとよいでしょう。
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